高圧契約の電気料金値上げの打診が急増。その背景は?
- インタビュー
当社には、法人のお客様の電力切り替えをサポートする「エネチェンジBiz」というサービスがあります。最近、法人のお客様から「電力会社から電気料金の値上げを打診された」という相談が増えています。そこで今回は、当社の執行役員で法人ビジネス事業部長を務める千島 亨太さんに、この値上げの背景について話を聞きました。
一番の原因は20年12月と21年1月の「JEPX市場価格の高騰」
法人のお客様から「電力会社から電気料金の値上げを打診された」といった相談が増えていると伺いました
法人のお客様は年に1回料金の見直しが行われることが多く、そういったタイミングで毎年「料金の値上げを打診されているので電力会社の切り替えを検討したい」というご相談はあります。しかし、今年は値上げの打診を相談の理由に挙げるお客様が増えています。例年ですと料金の値上げを電力会社切り替えの理由に挙げられる方は全体の5%ほどです。しかし、今年は全体の10~15%程度に増加しています。
値上げ幅はどのくらいでしょうか?
電力会社によってまちまちですが、基本料金は20%、従量料金は5~15%程度上がっている印象です。従量料金は使った分の料金ですので、基本料金を上げて電力会社自身の経営を安定させたいという考えのようです。
この値上げの原因は何ですか?
調達コストの増加により採算重視の方針に舵を切る電力会社が増えたことです。
一番のトリガーは、昨年12月と今年1月の日本卸電力取引所(JEPX)の卸売価格高騰です。通常は1kWhあたり7〜10円ほどで、高いと言われているときでも20円くらいでした。しかし昨年末から今年にかけて100円、200円と高騰しました。
この価格高騰は、寒波による電力需要の増加に加え、LNG、石炭など火力発電の燃料価格高騰や調達が上手くいかなかったことにより、需給バランスが崩れたことが原因です。
電力会社の電力の仕入れ方法は①自社の発電設備で発電した電力、②特定の相手と条件を決めて取引する相対取引、③JEPXからの購入の3つです。
以前は、自社の発電所で発電した電力と相対取引で交友した電力で供給量の9割ほどを賄い、ズレやブレといった1割ほどをJEPXから購入していました。自社で発電すると、コストは高くなりますが、安定した供給力を確保できます。
しかしここ数年はJEPXの価格が低い時期が続いていました。そこで、自分たちで発電するよりも市場から購入した方が安いと考え、JEPXからの購入を8割、自社での発電を2割などといった具合に調達比率を高める電力会社が増えていました。そのため今回のJEPXの価格高騰が事業運営に大きく影響を与えました。
市場価格に加えて、燃料、特にLNGの価格も高騰傾向にあります。燃料費調整単価はこのまま上がり続けるのでしょうか?
LNGを用いた火力発電の比率が高い東京電力を例として見てみましょう。10月の燃料費調整単価は高圧契約の場合は-1.94円と、とうとう1円台になりました。今年1~2月の-5円と比べると1年経たずして実質3円の値上げとなっています。
燃料費調整単価は直近3カ月の貿易統計の平均値から算出されるため、10月の燃料費調整単価は5~7月の3ヵ月平均燃料価格が反映されています。8、9月のLNGの輸入価格はさらに上昇していることを考慮すると、少なくとも来年の2月頃までは燃料費調整単価が上がり続けることになります。来年のどこかでマイナスからプラスに変わってしまう可能性も考えられます。
燃料調整費だけでなく、基本料金や従量料金も上がっているのは何故ですか?
先ほど少しお話ししましたが、燃料費調整単価は貿易統計価格の直近3カ月の平均値を2カ月後に反映することになっています。燃料費は毎月反映していると料金が安定しないため、このように設定されています。そのため、例えば10円のものが15円に値上がりしても、2カ月先までは10円で売らなければなりません。そこのギャップが生まれるため燃料費調整単価の値上げだけでは現状の価格を維持できず、基本料金や従量料金の値上げに踏み切っていると考えられます。
今後も電力市場がひっ迫し、市場価格が高騰する恐れはありますか?
電力広域的運営推進機関の調整力及び需給バランス評価等に関する委員会の資料によると、2022年の1、2月は東京電力管内で供給予備率がマイナスになると予測されています。冬季の需給見通しについてはあらためて今秋の需給検証において確認することになっていますが、1月が-0.2%、2月が-0.3%と、他エリアから最大限の融通を受けたとしても最大電力需要をまかなえないとされています。
前回のように取引価格が高騰するような市場のひっ迫が起これば、今はまだ料金の値上げをしていない電力会社も値上げに踏み切る可能性があります。
また、継続的な事業運営が困難となる(つまり破綻する)事業者が出てきたり、電力ユーザーとの取引を切りに動く事業者なども現れる可能性があります。
電気料金の削減のほか、環境価値や信頼性など最適なプランを提案
値上げの打診をされたというお客様に具体的にどのような提案をされていますか?
複数の電力会社と提携していただいているので電気料金の削減はもちろん、環境プランの提案や与信面を含めた信頼性などそのお客様のご要望に合った最適な電力会社やプランを提案できるのがエネチェンジBizの強みです。「安いプランが一番!」という時代は終わったと考えています。今は再生可能エネルギーで発電した電力を選ばれる方や、電力会社の信頼性を重視する方など、お客様の要望はさまざまです。
価格よりも信頼性を重視される背景には何がありますか?
電力会社の事業撤退や破綻などが相次いだためです。企業間の契約ですので、財務状況を重視されるお客様が増えています。また財務状況だけでなく、説明が信頼できるか、納得できるかというところも重視されるポイントになっています。
例えば市場連動価格のプランは、市場価格が低いときは電気料金が安いというメリットがあります。しかし、市場価格が高騰した場合は、電気料金が跳ね上がります。契約時に料金が安くなるというメリットの説明はあったが、高くなる場合もあるというデメリットについては詳しく説明されなかったという方もいるようです。
当社は中立的な立場で電力会社さんや各プランの特徴についてご説明いたします。そして電力業界に精通したメンバーも多く、燃料調整費やJEPXの仕組みなどについても詳しくご説明できます。何か疑問や不明なことがあれば、ぜひご連絡いただければと思います。
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