“エネルギーリソースの価値を最大化する”DR・VPPサービス
- サービス紹介
アグリゲーションプラットフォーマーを目指して
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギー(再エネ)発電の普及拡大が急務となっています。再エネの普及には、電力需給を調整することが不可欠です。そこでENECHANGEでは、スマートメーターデータを活用したピークシフトを促すデマンドレスポンス(DR)や、分散型のエネルギーリソースを統合制御するバーチャルパワープラント(VPP)への取り組みを加速しています。ENECHANGEのテクノロジー・サービスを通じて調整力リソースを「つくり」「集める」ことで、アグリゲーションプラットフォーマーとして脱炭素社会の実現を目指します。
「スマートエネルギーWEEK秋」にて講演
10月1日には東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWEEK秋」(RX Japan株式会社主催)で、当社執行役員の有賀 一雅SMAP事業部長が、「リソースの価値を最大化するエネチェンジのVPP・DRサービスについて」をテーマに講演を行いました。今回はその講演内容をお伝えします。
再エネの普及拡大に欠かせないのは「需給調整」
近年、世界各国で「脱炭素社会」の実現に向け、舵を切っています。その実現の鍵を握るとされているのが、再エネ発電です。再エネはクリーンな発電方法ですが、太陽光発電や風力発電の場合、天候や自然条件によって発電量や発電できる時間帯が変動します。電気は基本的に貯められないため、常に需要(使う側)と供給(作る側)を調整し、バランスを保つ必要があります。バランスが崩れると電気の品質の一つである周波数に乱れが生じ、最悪の場合、大規模停電が発生する恐れがあります。そこで、再エネの普及拡大には、需給を調整することが求められます。
需給調整市場の取引が開始
加えて日本では、2021年4月に需給調整市場の取引が始まりました。2024年度からの容量市場の本格始動に向け、調整力の取引市場は段階的に拡大していきます。このような背景から、大規模発電所をメインとする従来型のエネルギー供給システムの見直しや、需要家側のエネルギーリソースを活用する仕組みの構築が必要とされています。
そこでENECHANGEは、調整力を「つくり」「集める」ことが重要と考えます。
調整力をつくる①家庭向けDRサービス「SMAP DR」
調整力をつくる仕組みとしてENECHANGEが注力しているのがDRです。ENECHANGの子会社であるSMAP ENERGY社は、スマートメーターから取得される電力データの解析サービス「SMAP」(Smart-Meter Analytics Platform)を電力小売事業者(電力会社)向けに展開しています。
そのサービスの一つである「SMAP DR」は、家庭向けDRサービスです。夏や冬に電力の供給量がひっ迫したときに電気の使い方を工夫することで、需要と供給のバランスをとります。再エネが十分に発電している際には、電気を使う時間帯をシフトすることで再エネを有効活用できる取り組みです。需要を減らす(抑制する、ネガワット)「下げDR」、需要を増やす(創出する、ポジワット)「上げDR」の2種類があります。事前にDR発令を知らせる通知をで行い、電力需要パターンを変化させます。ポジワット量・ネガワット量の確保ができます。調達価格を踏まえた調整を行うことで、費用削減や利益創出につながります。
家庭での電気の使い方を工夫してもらう
SMAP DRには「行動変容型DR」と「スマートデバイス型DR」があります。行動変容型DRは、DRをお願いする時間帯を各ご家庭に前日にお知らせし、その時間帯はエアコンの設定温度を変えたり、洗濯機を回す時間をずらしたりするなど、各家庭で電気の使い方を工夫していただくことで、電力需要をコントロールします。
DR発動条件は、上げ・下げそれぞれで複数のレベル設定が可能です。レベル差による還元率設定、機器制御設定により各ご家庭の行動変容促進を促します。JEPX価格に連動した条件設定(しきい値設定)および時間帯・対象メニューを指定した発動条件など、各電力小売事業者ごとの要望に合わせた条件設定が可能です。すでに複数の電力小売事業者に採用いただいています。
ご家庭ごとの変化量はマイページやメール通知で確認できます。「獲得したポイントやランキングなどを見ることができ、ゲーム感覚で節電を楽しめる」といった声を多くいただいています。
DR発動を知らせるメールの開封率は約60%で、一般的なお知らせメールの開封率と比べると2倍ほど高くなっています。SMAP DRを活用することでお客様とのコミュニケーションをより高めていくことも可能です。
スマートデバイスで冷蔵庫などの家電を制御
スマートデバイス型DRは、DR発動時にスマートリモコンやスマートプラグを用いてエアコンや冷蔵庫などの家電を遠隔制御し、節電量を創出する仕組みです。スマートデバイス型の日本で初めてとなる実証実験は、今秋より開始する予定です。
各ご家庭での行動変容により生まれた電力と各ご家庭の冷蔵庫などの家電抑制により生まれた電力を「調整力」として束ね、新たな価値創造へ取り組みを拡大していきます。
複数の小規模発電源をまとめて一つの仮想発電所に
工場や事業所、家庭などが有する分散型のエネルギーリソースを、IoT(モノのインターネット)を活用したエネルギーマネジメント技術によりを束ね(アグリゲーション)、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランス調整に活用します。
分散リソースをあたかも一つの発電所のように機能させることから、「バーチャルパワープラント(仮想発電所、VPP)」と呼ばれています。VPPは、負荷平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給などの機能として電力システムで活躍することが期待されています。
調整力をつくる②VPPサービス「Kiwi Power」
ENECHANGEはVPPソフトウエア分野でイギリス最大手のKiwi Power Ltd.と業務提携をしており、Kiwi Power社の日本での販売代理店として「Kiwi Fruit(キウイフルーツ)」と「Kiwi Core(キウイコア)」という2つのサービスを提供しています。
Kiwi Fruitは、太陽光発電システムや蓄電池といった設備や機械などのリソースの制御盤に設置することで、稼働状況のモニタリングや制御指令ができるエッジデバイスです。Kiwi Coreは、Kiwi Fruitから得られた情報を管理するためのプラットフォームです。リソースの稼働スケジューリング、制御状況のモニタリングなどが可能です。
Kiwi Fruitは、電力量を秒単位で計測し、計測データをKiwi Coreに転送します。Kiwi Coreはブラウザベースでリソースの稼働状況の確認や、制御のスケジューリングが可能です。外部インタフェース接続用の端子を設けており、市場取引をするクライアントシステムとの連携ができます。スポット市場や需給調整市場などの情報を基に、需給調整が必要な時間帯にKiwi Fruitへ指示することで、調整力をつくり出します。
小売電気事業者のほか、不動産ディベロッパーやメーカーも
このシステムはすでに10カ国以上で100万kW以上の分散型エネルギーリソースを管理している実績があり、日本でも分散型エネルギーリソースの価値を最大化できる仕組みだと考えています。
来年の日本でのサービス開始に向け、小売電気事業者のほか、需給調整市場、容量市場での調整力の取引を予定している大型需要家、アグリゲーターといったPoC(実証実験)のパートナーを募集しています。エネルギー業界問わず、例えば賃貸マンションやテナントビルなどを所有する不動産ディベロッパーや、ホテル経営者といった方もKiwiを用いて物件の電力を制御することで、調整力を生み出すことが可能です。発電機などのメーカーでは、製品とKiwiを組み合わせることで、電力使用の制御が可能になり、製品に付加価値をつけることができます。色々な業界・業態で活用いただける仕組みだと考えています。
分散型リソースの一つの柱はEV
分散型リソースの中で今、注目されているのは電気自動車(EV)です。ヨーロッパは日本に比べEVが普及しており、充電設備などのEVインフラの整備も進んでいます。日本でも今後、EVの普及拡大を受け、EVインフラの整備が重要になってくると考えています。
EV所有者は、自宅や事業所で夜間に普通充電器で充電するのが一般的です。しかし今後、EVに搭載される蓄電池の容量は大きくなっていくことが予想され、夜間に8~9時間充電したとしても、満充電にならないケースも出てくることになります。
加えて、EVの蓄電池の容量が大きくなると今よりも遠出できるようになります。そうなるとコンビニや道の駅などで充電する「経路充電」や、旅館・ホテル・レジャー施設で充電する「目的地充電」の需要がますます高まるため、急速充電器の整備が重要になると考えています。
調整力をつくる取り組み③EV向け低圧急速充電器
ENECHANGEでは、アメリカのFreeWire Technologies社の電気自動車(EV)向け蓄電池搭載型急速充電器「Boost Charger™」の販売を行っています。FreeWire Technologies社があるアメリカでは、EVの普及が進んでいるカリフォルニア州を中心にガソリンスタンド、コンビニエンスストアなどに設置されています。今年の1月にはイギリスのエネルギー最大手bp社(ブリティッシュ・ペトロリアム)が、数百台規模で採用しました。日本では、BellEnergy社(茨城県つくば市)が輸入・ローカライズ、当社が販売しています。
大型蓄電池内蔵により低圧契約でも急速充電を実現
Boost Charger™の最大の特長は「急速充電器にもかかわらず、低圧受電契約で使用できる」点です。一般的に急速充電器の設置には高圧受電契約が必要で、キュービクルという高圧受電設備を設置しなければなりません。
しかしBoost Charger™は、160kWhの大型蓄電池を内蔵しています。そのため、27kWの低圧受電契約で供給した電気を一度蓄電池に溜めることで、最大120kWの高圧で出力できます。日本で最も主流なCHAdeMO(チャデモ)方式の充電口が2つあり、1口最大100kW、2口同時で120kW(1口60kW)の充電が可能です。
低圧契約で急速充電を実現できると、キュービクルの設置スペースの削減やランニングコストを抑えられるというメリットがあります。
クレジット決済対応。ダイナミックプライシングのシステム提供も
日本では一般的に、充電サービス会社や自動車メーカーなどの有料会員になり、支払い方法を事前に登録してからでなければ充電器を利用できない場合が多いです。その点、Boost Charger™は、クレジットカード(Visa、Masterブランドに対応)によるその場での支払いが可能で、事前の登録作業や会費が発生しません。多くの方に利用していただきやすい仕様です。
ユーザーの利用料金は、時間課金とkWh課金の両方に対応しており、2022年4月に予定されている「特定計量制度」の施行以降はkWhによる課金(従量制課金)が可能になる見込みです。EVはバッテリーの使用状況により充電効率が変わるため、同じ充電時間でも充電量が異なる場合があります。時間でなく充電量で課金できるようになれば、ユーザーに対してフェアな価格で充電サービスを提供できます。
ENECHANGEのテクノロジーを活用したダイナミックプライシングのシステムと組み合わせることで、BoostCharger™を単なる充電器としてだけではなく、柔軟な価格設定を通じた調整力リソースとしての活用を目指していきます。
調整力を集める「エネチェンジDR」
調整力を集める取り組みとして「エネチェンジDR」をご紹介します。エネチェンジDRとは、デマンドレスポンスが可能なリソースを所有する法人様に最適なアグリゲーターのご紹介・契約サポートを行うサービスです。
先ほどごご紹介したSMAP DRは、調整力をつくるための家庭向けサービスですが、エネチェンジDRは、調整力を集める法人向けのサービスです。
お客さまに最も良い条件のアグリゲーターを選定
DRが可能なリソースを所有する法人のお客様に最適なアグリゲーターのご紹介・契約サポートを行うサービスです。お見積りに必要な情報をお送りいただければ、アグリゲーターにより異なる複雑な条件を整理し、条件、見積もりを分かりやすく比較いたします。
今後、多くのアグリゲーターがVPP事業に参入することが予測されます。お客様にとって最も良い条件のアグリゲーターを毎年選定し、契約の見直しのご提案もいたします。
◎SMAP DRのサービスサイトはこちら
◎EV向け蓄電池搭載型急速充電器「Boost Charger™」のサービスページはこちら
◎エネチェンジDRのサービスページはこちら
◎Kiwi Power Ltd.との業務提携に関するプレスリリースはこちら