進化を続けるENECHANGEがCFO交代で描く新たな成長戦略
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2024年2月1日、ENECHANGE(エネチェンジ)に新たなCFO丸岡智也が着任しました。
非上場だったENECHANGEを上場まで牽引した前CFO杉本拓也が築いた基盤が丸岡に引継がれ、新たな視点でENECHANGEを更なる成長へと導く役割が託されました。ENECHANGEの上場前後のエピソードと今後の新たな戦略について新旧CFOの対談を通じてお伝えします。
杉本さんのENECHANGEでのご経験について
杉本:2019年7月にENECHANGEに入社し、約4年半CFOを務めました。初期の1年半は、上場を目指すプロジェクトの推進や、財務戦略立案と実行が主な役割でした。上場プロジェクトとして証券会社様と対応を進めつつ、のちにIR資料になっていく投資家説明資料をまとめたり、取締役会の運営フローを構築したり、最初の1年半は、ほとんどの業務が結局のところ上場に向けたものでした。
2020年12月、東証マザーズ(現グロース)市場への上場を果たしましたが、上場時の公開価格が想定した水準ではなかったため、すぐに次の資金調達に向けた準備を水面下で進めていきました。上場直後からIR活動には力を入れていて、株価推移をみながらタイミングを図り、結果的に上場から約1年後、2021年12月に公募増資をさせていただきました。
並行して、弊社にとって上場後第1号となるM&A(2021年10月)を推進したり、公募増資のあとは、投資家の皆様からの資金を活用した成長段階に移行していきましたので、2022年ごろからは、新規事業であるEV充電事業の枠組みづくりなども行ってきました。
ENECHANGEのEV充電事業参入についてのご感想
杉本:CFO就任当初より新規事業への取り組みは構想としてあり、ただ上場のタイミングでは新規事業を開始することが難しかったり、世の中の動きを見ながらタイミングを図っていたところがあります。ENECHANGEはエネルギー領域をビジネスドメインとしていますので、既存事業との相性を考慮すると、EV充電事業への参入自体は自然な流れだったかなと思います。
杉本さんのCFO時代のM&A戦略について
杉本:私がCFOを務めていた期間のM&Aは、主に既存ビジネスを補完することを意図していました。既存事業を進めるうえで足りていない分野、もしくは成長をさらに加速させたい分野であることを重視し、全社的な成長戦略のための一つの手段としてM&Aを行ってきました。この方針は、丸岡さんがCFOに就任してからも、今打ち出しているストーリーを強化する目的に資する手段として、活用していくことになると思います。
新CFO丸岡さんへの期待とアドバイス
杉本:あらゆることにスピード感のある会社ですので、柔軟な対応をお願いしたいと考えています。上場から3年が経過し、ENECHANGEがどんな会社か、どんな事業をやっているかといった認知は、ある意味で確立してきた部分があると思います。一方で、今後の事業展開に関しては、きっとこれからも世の中の動きを見ながら、軌道修正や方向転換を臨機応変にしていくことになると思います。CEOの城口さんや他の経営陣、取締役会メンバーと議論しながら、企業全体を俯瞰しつつ戦略を策定していただきたいと願っています。
丸岡さんのご経験について
丸岡:私は新卒で日本政策投資銀行に入行し、航空機ファイナンスやストラクチャードファイナンス、海外案件を担当しました。その後、事業活動そのものに、より深く関わりたいという思いから、コンサルティング会社のマッキンゼーに転職しました。マッキンゼーでは、主に事業会社向けに成長戦略とM&A戦略の立案と実行、プライベートエクイティ等の投資家向けに投資デューデリジェンスサービスなどを行いました。日本での4年間の勤務の後、同社のニューヨークとロンドン支社で引き続き投資家向けビジネスに4年弱従事しました。帰国後は、日本の事業会社で経営企画業務に携わりました。
新CFOとしてのビジョンと役割
丸岡:杉本さんが築いてこられたENECHANGEの上場前後のCFOの役割から、上場から3年が経過した現在、CFOに求められてくる役割が変化しているものと理解しています。今までは上場準備やその後のファイナンス、新規事業立ち上げのスキームづくりを、杉本さんがリードしてきました。今後は、CFOの役割も変わってくるフェーズだと思ってます。例えば、ENECHANGEの現在の3つの事業ポートフォリオ(エネルギープラットフォーム事業、EV充電事業、エネルギーデータ事業)の成長戦略の立案や更なる成長を促すために経営企画・財務の観点から事業を横串を通して見ることが重要になります。この点で、私のこれまでの経験を活かし、CEOの城口さんを始めとした経営陣とアラインしながら企業全体の方針を定め、事業部と協力して推進していくことが期待されていると思っています。また、事業拡大のためのM&Aや、事業成長に向けた新しい資金調達、そして、その成長ストーリーを投資家の皆さまへ確りと伝えていくことも引き続き重要なCFOのテーマだと考えています。
丸岡さんがCFOとしてENECHANGEを選んだ理由
丸岡:私がENECHANGEを選んだ主な理由の一つは、社会的意義とその市場の成長性です。新卒で日本政策投資銀行に入ったときもそうでしたが、働くなら社会的意義のあるテーマにトライしたいと思っています。その点、ENECHANGEが目指すカーボンゼロの実現というのは非常に意義を感じます。また、カーボンゼロを達成するためには、国内約18兆円の電力市場における脱炭素化、そして、9兆円といわれるガソリン市場の電化が必要であり、その大きな変化と成長が見込める点が魅力的でした。
また、城口さんご自身の魅力、海外の成功モデルを取り入れたタイムマシン経営という方針にも信頼を寄せています。さらに、社員一人ひとりが当社のミッションに共感し、高いレベルで業務を遂行し、自立的に考え、事業を最適化していく社風も、この会社を選んだ重要な点です。
ENECHANGEのCFOとしての挑戦と戦略
杉本:当たり前ですが、上場企業として、株主様や投資家の皆様に対するIR情報の開示は非常に重要です。開示情報を出している以上、例えば業績予想を開示したら、その予想の達成に向けた努力と進捗状況、仮に未達に終わるのであれば実直に報告をしていかなければなりません。世の中に対してどのように目標を開示し、そしてそれに対して実績を出していくというサイクルが詳らかになるというのは面白さであり、挑戦でもあります。
振り返ってみると、私のCFOとしての役割はENECHANGEの上場と上場後のIRやファイナンスの基盤構築だったのかなと思います。丸岡さんには、ENECHANGEをさらに成長させるため、城口さんと連携して、CFOとして次の成長戦略の立案と実行を期待しています。
丸岡:ENECHANGEの足許の業績を見ると、以前から大きく変化しています。今年は、EV充電事業が通期で本格化し、既存のプラットフォーム事業やデータ事業とのシナジーを発揮し始めるなど、今見えている世界と、1年後に見えている世界は結構違ってきているのではないかと思っています。
そのような中で、CFOとして投資家の皆様に対して、成長ストーリーを明確に伝えていき、きちんと結果をお示しする。この1年が、今後の更なる成長戦略を考える上で重要な時期であり、ENECHANGEが次のステップに進むために非常に重要な年となると思っています。
その先に、時価総額1,000億円を超えるメガベンチャーという姿が見えてくると思っています。
「資金・キャリアコミット型メガベンチャーインセンティブ」※ についての丸岡さんの見解
丸岡:この施策には3つの重要な点があると思っています。第一に、上場企業として社員に対しキャリアと資金へのコミットメントを通じて非連続的リターンを提供する非常に刺激的な機会となってます。第二に、当社のミッションに賛同し、成果にコミットメントする社員の集まる集団であることが可視化され、良い組織作りに寄与していると考えます。実際、このインセンティブプランへの参加募集は、社員から大きな反響を呼び、多くの社員が参加を希望しました。第三に、この施策はグロース市場にとっても前向きなシグナルになると感じています。グロース市場においても成長が停滞する企業が存在する中、ENECHANGEはその壁を乗り越え、プライム上場へ向けたコミットメントを示し、ベンチャー企業としての成長を外部にアピールする良い機会となっています。
※「資金・キャリアコミット型メガベンチャーインセンティブ」の詳細はこちら(https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2378163/00.pdf)
「エネルギーの未来をつくる」ミッションを持つENECHANGEの将来展望
杉本:「エネルギーの未来をつくる」という社会的意義のあるミッションに、数百人単位で人が集う企業はなかなか珍しいと思います。自社の事業を進めながらも、官公庁や他の事業者とも議論を重ねており、プラットフォーマーとして中立的な立場での事業運営ができている点がENECHANGEの特徴です。世の中の大きなテーマである脱炭素社会の実現に向けて、一方で手触り感のある事業をしている会社ですので、この軸を持続していってもらいたいと思います。
丸岡:ENECHANGEは、大きなミッションを掲げ、社会にインパクトを与えていますが、成長の余地はまだ大きいと思っています。電力プランが複雑化する中で、電力切替プラットフォームのニーズは今後も増えると思いますし、ベンチャー企業として成長が期待されるEV充電インフラの市場に参入し、既存の他事業者や官公庁と協力しながら、バランスの取れた事業運営を行っています。このアプローチを維持しながら、「エネルギーの未来をつくる」というミッションのもとに集う優秀な社員とともに、意義あるビジネスを更に成長させていけることを非常に楽しみにしています。